【リライト】深夜の戦い

2008年04月11日 23:42

 外から、猫の激しいうなり声が聞こえてきた。
 私は二階の自室を後にすると、忍び足で階段を下り、一階の駐車場の様子を伺った。
 そこには、見憶えるのある白い猫が毛を逆立てていた。
 「うーぴー」だ。

 「うーぴー」はこのマンションに多くいる飼い猫のうちの一匹。
 他の猫と違い外飼いの彼は、ベランダを伝ってやってくるのか、時折、我が家のベランダの洗濯機の上でひなたぼっこをしている事がある。
 冬になるとベランダから「ほにゃ〜ん、ほにゃ〜ん」と中に入れるよう催促し、開けてやるとストーブの前で丸まって寝てしまう。
 その人なつっこい「うーぴー」も、外では野生の戦いを繰り広げている。
 この駐車場は、そうして死守してきた彼のテリトリーだ。
 今日のように、外敵が侵入してくると威嚇し、時には戦う。
 その大きな白い体に目立った傷もない事から、彼の強さが窺い知れる。

 その彼が、普段以上に全身の毛を激しく逆立て、何者かを威嚇している。
 だが、その相手の姿が何処にも見えない。
 次の瞬間、彼が跳躍し、何もない空間に躍りかかった。
 そこで彼は空中に爪を立て、軌道を変えて地面に落ちる。
 確かに何かがいて、その何かに攻撃が加わっているのだ。
 「うーぴー」は何度もその空間に飛びかかった。

 やがて、彼は唸るのをやめ、毛並みが元に戻った。
 どうやら勝利したらしい。
 とぼとぼと歩いてくる彼は、私の姿を見つけると、足下にすり寄ってきた。
 彼は私を見上げると、いつも通りの表情で「ほにゃ〜ん」と鳴いた。

(超-1 2008/「深夜の戦い」より)


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