【リライト】オラは

2008年04月14日 01:38

 六十年代末期、ある歌謡曲が突如大流行した。
 大迫さんは、その歌が大嫌いだった。

 彼の運転する観光バスには、遠足や修学旅行の生徒を乗せる事が多い。
 旅行の道中は、歌謡曲タイムになるのが定番。
 すると、どのグループも判で押したように、あの曲を歌い始める。

 彼らの命を握るハンドルを慎重に駆使し、安全運転を心がけているのに。
 なんだって、そんな縁起の悪い歌ばかり歌うんだ。
 しかも鼻をつまんで、甲高い声で。
 全く近頃の……。

 その日も、バスが走り始めて少しすると、子供達が大合唱をはじめた。

 オラはしんじまっただぁ〜
 オラはしんじまっただぁ〜

 もっと他の良い曲があるだろうが、と思いながら、大迫さんは忌々しげにバックミラーを見た。
 何が楽しいんだか、指揮者までいる。
 バックミラーには、親指と人差し指を立てた右手が、タクトを振るようにひらひらと揺れている。
 気にすまいとも思うのだが、視界の隅で揺れるその手が、逆にどんどん気になってくる。
 その誘惑に負けた彼は、何気なく振り返った。
 しかし、誰一人として手を振り上げてなどいない。
 もう一度バックミラーを覗き込むと、やはり右手が音頭を取っている。
 バックミラーに写るその右手の、その掌がこちらに向かって揺らめく。
 まるで、大迫さんに向かって手を振っているかのように。
 そう考えた途端、彼はぞっとした。

「ううう、うるせぇっ! 何度も何度も死んじまった死んじまった言うなあぁぁっ!!」

 思わず、大声でわめき散らした。
 車内が静まりかえる。
 恐る恐るバックミラーを覗き込むと、あの手は消えていて、不安そうな子供達の顔だけが写っていた。

 その後も何度か別の子供達を乗せる事があったが、あの手首が現れる事はなかった。
 ただ、流行が去るまでの間、大迫さんは我慢を強いられ続けた。

(超-1 2008/「オラは」より)


コメント

  1. 山際 みさき | URL | -

    大迫さんが

    なんだかガラが悪く書かれているのが気になります。

  2. せんべい猫 | URL | TVCQ2tMo

    職人気質のぶっきらぼうな方だと思ったので、そこを強くしてしまいました(^^;

  3. 山際 みさき | URL | -

    職人気質で

    ぶっきらぼう、というのと
    "けっ"
    "どこのガキだ"
    などという言葉を言うのとはちがいますよね?
    話をしてもらった人はそんは言葉は言っていないのに、そういった言葉で書かれればやはり不快で、その人に対しても大変失礼だと思います。

  4. 山際 みさき | URL | -

    ×そんは

    ○そんな

    失礼しました。

  5. せんべい猫 | URL | TVCQ2tMo

    キャラに難がある部分(+文法的に変な部分他)を訂正しました。

  6. 山際 みさき | URL | blbI1JLE

    こんばんは。

    文章でも音楽でも絵でも、世に出して人様の目や耳に触れればその作品についてどう思うかは人それぞれ、それについて作者はどうこう言えるものではなくなってしまうわけで、リライトについてもそう言えるとは思います。
    が、せんべい猫殿のリライト作品については、原作とは違う、せんべい猫殿独自に考えられた/想像された/推測された部分が付加されている部分が多々見受けられます。
    そういった部分を原作者がどう思うかはまたそれぞれ、良い、自分の作品より面白くなった、こういうのもあったのか、というのもあれば、自分はこんな事書いてない、自分の言いたかった事はこんなじゃない、というのもあると思います。
    大会中、せんべい猫殿や他の方が書かれた自分のリライト作品を見て色々と思った方は多いのではないでしょうか。
    自分の作品は誰だって大事に思ってますよね。
    そのあたりの事をせんべい猫殿にも今一度よくわかっていただきたいと思います。
    リライトされた=自分の手を離れた作品についてあれこれ意見を言うのもおかしな事で、それなら初めからリライト全面不可!にすべきなのかもしれませんが。

  7. せんべい猫 | URL | TVCQ2tMo

    描写の肉付けについてですが、まずすべての話において、悪意を持って行ったものではないということを、改めて申し上げます。
    ですが、意図のある・なしに関わらず、原典に関わる方々に不快な思いを与えた事については、全て私の不徳の致すところであり、大変申し訳なく思っています。

    実話怪談には体験者・話者が存在している。
    その存在を軽んじる事はあってはならず、その事を改めて噛みしめなければならないと思っています。
    非常に言いづらいことだったと思いますが、それをあえて仰って頂けたことは、とてもありがたいと同時に、そこまで言わせてしまった、という事でもあり、重く受け止めています。

    言葉を重ねても贖えることではありませんが、改めてお詫び申し上げます。

  8. 山際 みさき | URL | blbI1JLE

    ご理解いただき

    ありがとうございます。

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