【リライト】対決

2008年04月15日 00:45

 放課後、久美子さんは帰る前に校庭の脇にあるトイレに立ち寄った。
 鉄製の重い扉を開けて中に入った瞬間、彼女はトイレ内の異様な気配に気付いた。
 その気配は、トイレの一番奥の、扉の閉まった個室から漂ってくる。
 慌てて外に出ようとしたが、扉が開かない。
 やがてゆっくりと、その個室の扉が開きはじめた。
 気が動転した彼女は、すぐそばの個室に駆け込むと、扉を閉じて鍵を閉めた。

 あの個室から、何かが久美子さんの入った個室の前に近づいてくる。
 威圧するような気配が、扉一枚下手出た向こう側で立ち止まっている。
 彼女はあまりの恐ろしさに身がすくみ、震えていた。

 少しして、急にその気配が薄らいだ。
 完全に消えたわけではなく、気配がそれた、そんな感じだった。
 恐る恐る、彼女は扉を開いた。

 少し離れたところに、白い服を着た痩せた女が浮かんでいる。
 その体中から、禍々しい殺気が放たれている。
 その女は、憤怒の形相で、トイレの奥を睨みつけている。

 その視線の先に、大柄な山伏が仁王立ちしていた。
 白装束に身を包み、片手に法螺貝、片手に錫杖を携えている。
 山伏もまた、鬼の形相で女を睨み返している。

 まさに一触即発の状況。
 空気が凍り付いたかのような緊張感がトイレを包む。

 いたたまれなくなった久美子さんの目が、入り口の扉が僅かに開いているのを捕らえた。
 山伏と女の決着を見届けることなく、彼女は自分でも驚くくらい素早く個室を出て、一目散に扉の向こうへ逃げた。

(超-1 2008/「対決」より)


コメント

    コメントの投稿

    (コメント編集・削除に必要)
    (管理者にだけ表示を許可する)

    トラックバック

    この記事のトラックバックURL
    http://senbeineko.blog45.fc2.com/tb.php/130-a102f6b8
    この記事へのトラックバック


    最新のエントリー