2008年04月18日 23:23
高木さんは仲間五人と盛り上がり、心霊スポットに肝試しに行くことになった。
場所は、たまたまバラエティ番組で紹介されていて、近場ということもあり、観音崎公園に決まった。
観音崎公園には、江戸末期に複数の砲台が設置され、太平洋戦争の頃には要塞として活用された。
現在はそのうちのいくつかは取りつぶされたり埋められたりしているが、いくつかは台座後や司令部跡などが残り、遊歩道のそこかしこに不自然に埋められた通路跡などを窺い知ることが出来る。
その中に、『血塗られた砲台跡』があるという噂がある。
封鎖された施設跡のうち、いくつかは鉄の扉で厳重に封印されている。
その扉の向こうには、内壁が血に染まったものがあるというのだ。
平日の深夜、六人は懐中電灯を片手に、公園に足を踏み入れた。
簡単に『血塗られた砲台跡』が見つかるだろうと思っていた彼らだったが、それが甘かった。
それっぽい施設跡があちこちに点在しており、それらは閉じられている。
六人の中には、肝試しの為に器物損壊の罪を犯そうという猛者はいなかった。
収穫のないまま、彼らは元来た道へ戻った。
夜道に、彼らの足音だけが響く。
と、その後ろから。
ざっ、ざっ、ざっ、ざっ。
乱れのない一定のリズムで近づく大勢の足音。
振り返っても人の姿はない。
「おい、これって……」
「どう考えても、軍隊……だよな?」
高木さん達は足を速めた。
しかし、足音は彼らから離れることなく聞こえてくる。
いや、徐々にその間隔を狭めつつあった。
焦った高木さん達は、なりふり構わず猛ダッシュした。
やがて駐車場に辿り着くと、彼らはバイクに跨り、我先にと逃げ出した。
そんな中、仲間のひとり、山本君だけが逃げ遅れた。
彼はどうにか愛車を走らせるが、その後ろからはアスファルトを踏みならす軍靴の音が付いてくる。
愛車の速度を上げるが、全く引き離せない。
愛車がバランスを失い、山本君は転倒した。
どうにか起き上がり、愛車を起こし、押しながら歩き始めた。
そんな彼をあざ笑うかのように、足音はつかず離れずの距離を保つ。
やがて道路の向こう側から、五つのヘッドライトが近づき、彼を照らした。
その瞬間、足音が消えた。
「おい、大丈夫か?」
駆けつけてきた仲間に、山本君は半泣きでキレた。
「だ、大丈夫なわけ、ないだろっ!
さっきまでずーっと、足音に追っかけられてたんだぞっ!
俺一人置いて逃げやがって! 薄情者!」
「でも、お前だって悪いだろ」
高木さん達は苦笑しながら、山本君が押してきた自転車を指差した。
(超-1 2008/「山本君」より)
場所は、たまたまバラエティ番組で紹介されていて、近場ということもあり、観音崎公園に決まった。
観音崎公園には、江戸末期に複数の砲台が設置され、太平洋戦争の頃には要塞として活用された。
現在はそのうちのいくつかは取りつぶされたり埋められたりしているが、いくつかは台座後や司令部跡などが残り、遊歩道のそこかしこに不自然に埋められた通路跡などを窺い知ることが出来る。
その中に、『血塗られた砲台跡』があるという噂がある。
封鎖された施設跡のうち、いくつかは鉄の扉で厳重に封印されている。
その扉の向こうには、内壁が血に染まったものがあるというのだ。
平日の深夜、六人は懐中電灯を片手に、公園に足を踏み入れた。
簡単に『血塗られた砲台跡』が見つかるだろうと思っていた彼らだったが、それが甘かった。
それっぽい施設跡があちこちに点在しており、それらは閉じられている。
六人の中には、肝試しの為に器物損壊の罪を犯そうという猛者はいなかった。
収穫のないまま、彼らは元来た道へ戻った。
夜道に、彼らの足音だけが響く。
と、その後ろから。
ざっ、ざっ、ざっ、ざっ。
乱れのない一定のリズムで近づく大勢の足音。
振り返っても人の姿はない。
「おい、これって……」
「どう考えても、軍隊……だよな?」
高木さん達は足を速めた。
しかし、足音は彼らから離れることなく聞こえてくる。
いや、徐々にその間隔を狭めつつあった。
焦った高木さん達は、なりふり構わず猛ダッシュした。
やがて駐車場に辿り着くと、彼らはバイクに跨り、我先にと逃げ出した。
そんな中、仲間のひとり、山本君だけが逃げ遅れた。
彼はどうにか愛車を走らせるが、その後ろからはアスファルトを踏みならす軍靴の音が付いてくる。
愛車の速度を上げるが、全く引き離せない。
愛車がバランスを失い、山本君は転倒した。
どうにか起き上がり、愛車を起こし、押しながら歩き始めた。
そんな彼をあざ笑うかのように、足音はつかず離れずの距離を保つ。
やがて道路の向こう側から、五つのヘッドライトが近づき、彼を照らした。
その瞬間、足音が消えた。
「おい、大丈夫か?」
駆けつけてきた仲間に、山本君は半泣きでキレた。
「だ、大丈夫なわけ、ないだろっ!
さっきまでずーっと、足音に追っかけられてたんだぞっ!
俺一人置いて逃げやがって! 薄情者!」
「でも、お前だって悪いだろ」
高木さん達は苦笑しながら、山本君が押してきた自転車を指差した。
(超-1 2008/「山本君」より)






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