【リライト】営業妨害

2008年04月18日 23:35

 千原の話によると、家電量販店には幽霊が多いらしい。
 といっても、彼自身は見たことがない。
 同僚や上司から様々な体験談を聞かされたのだという。
 その中でも、榎本さんという同僚の話が面白かったと彼は言う。

 榎本さんはかつて、南関東のある市にある店舗に勤めていた。
 そこは、とにかく出た。
 足音や気配は当たり前、展示品のテレビのチャンネルが変わったり電源が落ちたり、、無人のトイレから水音がしたり、冷蔵庫やテレビの開閉音が無人の店内に響き渡ったりと、とにかく騒がしかった。
 ただしすべて音だけで、従業員の中で、その姿を見たものはいなかった。
 土地の因縁だとか、自殺者があったとか、建物が三角だからだとか、様々な噂があったが、真偽の程は定かではなかった。

 ある日、フロアに女性の悲鳴が響き渡った。
 榎本さんが大急ぎでその場に駆けつけると、女性が冷蔵庫の前で腰を抜かしている。
 聞くと、冷蔵庫の中に、落ち武者の首があったらしい。
 榎本さんは冷蔵庫の中を見たが、中はカラだった。

 またある日、フロアに男性の叫び声が響き渡った。
 榎本さんが大急ぎでその場に駆けつけると、中年男性が震える指で電子レンジを指さしている。
 聞くと、電子レンジの中に、落ち武者の首があったらしい。
 榎本さんは電子レンジの中を見たが、やっぱり中はカラだった。

 そんなことが頻繁に続いた。
 あちこちで落ち武者などが目撃されたが、従業員の前には一切姿を現さない。
 このままでは噂が広がり、客が来なくなる。
 店長は悩んだ末に、上層部に直談判した。
 一蹴されると思われたその直談判はどういう訳か受理され、御祓いが執り行われることになった。

「効かなかったんだな、これが」
「へ?」
「それからもあちこちに落ち武者が現れて、客の悲鳴がこだましたんだな」
「最悪だな、それ……で、御祓いのやり直しはしなかったの?」
「できなかったんだよ」
「何で?」
「その祈祷師ってのが、取締役の親族だったんだよ。
 店長の話を聞いた取締役が、俺の身内に凄い祈祷師がいるから、そいつに任せれば大丈夫、って、めちゃくちゃ乗り気だったんだよ」
 あの祈祷師は役立たずでした、なんて、口が裂けても言えないだろ。
 みーんな泣き寝入り」

 それから間もなく、その家電量販店チェーンは不渡りを出して倒産した。
 その三角ビルは今でもある。

(超-1 2008/「営業妨害」より)


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