【リライト】トラウマ

2008年04月18日 23:47

 当時小学生だった原田さんは、蒸し暑い夜、嫌な夢を見て目が覚めた。
 若い女性と二人の子供が、恨みのこもった眼差しをぶつけてくる。
 そして次々と、銃殺されていく。
 憤怒の表情のまま、血だまりに崩れ落ちる体。
 目が覚めてもなお、その情景がくっきりと脳裏に焼き付いている。
 原田さんはべそをかきながら、隣に眠る祖父を起こそうとした。
 ところが、祖父は白目をむき、口からは泡を吹いている。

 慌てた原田さんは起き上がり、両親を呼ぼうとした。
 しかしその目の前で、祖父がむくりと起き上がると、口を開いた。

「誰 に も 言 う な」

 低い声で言い終えると、祖父は糸の切れた操り人形のように、力なく布団に倒れ込んだ。
 そしてその体から、ソフトボールほどの大きさの白い塊が三つ、次々と抜け出してくる。
 その三つの塊は舞い上がり、天井にぶつかると広がりなら消えていった。

 間もなく、何事もなかったかのように、祖父がいびきをかき始めた。
 その横で、朝が来るまで原田さんは声を押し殺して泣き続けた。

 二十年以上、誰にも話したことがない話である。

(超-1 2008/「トラウマ」より)


コメント

    コメントの投稿

    (コメント編集・削除に必要)
    (管理者にだけ表示を許可する)

    トラックバック

    この記事のトラックバックURL
    http://senbeineko.blog45.fc2.com/tb.php/153-42594197
    この記事へのトラックバック


    最新のエントリー