【リライト】ビードロ

2008年04月21日 03:36

 早紀さんは女友達三人と、長崎の平戸へ旅行に出掛けた。
 軽い観光と美味しい夕食、温泉でまったりと、彼女達は旅行を満喫していた。
 部屋は二部屋借りて、二人ずつのペアに分かれて寝る。
 早紀さんはペアになった亜美さんと軽くおしゃべりをしていたが、ふたりとも疲れていたのか、早々と布団に横になった。

 ぱこん。 

 奇妙な音に、すっかり熟睡していた早紀さんは目を覚ました。
 時計を見ると深夜二時。

 ぱこん。

 その音は、窓の方から聞こえた。
 ビードロのような、やや甲高い音。
 早紀さんは窓を見て驚いた。
 窓の外に、真っ白い女の姿があった。
 女は長い髪でワンピース姿。しかし、顔がよく見えない。
 早紀さん達のいるフロアは五階。
 人が立てるはずがない。

「さ、早紀……」

 呆然とする彼女の肩を、亜美さんが叩く。
 早紀さんが亜美さんの方を見ると、部屋の隅にあるテレビを指さして怯えている。
 電源の入っていないブラウン管には、中年の男の顔が映っていた。
 男は早紀さんと目が合うと、にたぁ、と笑った。

 早紀さんは亜美さんを連れて、隣の友人達の部屋に逃げ込んだ。
 事情を説明し、明け方まで四人で体を寄せ合ってやり過ごした。

 それ以来、早紀さんは長崎に行くのが少し苦手になってしまった。

(超-1 2008/「ビードロ」より)


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