【リライト】部屋

2008年04月21日 03:44

 真彦さん一家は十年以上前、ある一軒家に引っ越した。
 築年数は浅く、部屋数も多くて二階建て。
 しかも家賃が安い。
 お爺さん、両親、大学生の真彦さん、中学生の妹という五人家族にはちょうどいい物件だった。
 大人は一階に、子供達は二階に部屋を持った。

 住み始めて間もなくのこと。
 夜になると妹の部屋が騒がしくなる。
 部屋中をパタパタ走り回り、壁をドンドン叩く。
 思春期の女の子だし、暴れることくらいあるか、と、真彦さんは気にしないようにした。

 ある日、真彦さんは風邪で大学を休み、部屋で横になっていた。
 すると、妹の部屋からパタパタと走り回る音が聞こえる。
 またか、と思ったがすぐにおかしいことに気付いた。
 今は真っ昼間。妹は学校だ。
 それどころか、家族もみな外出していて、この家には自分だけ。
 多分熱のせいだ、と言い聞かせ、目を閉じた。

 引っ越してきてから半年ほどして、妹が一階の母の部屋に移ると言いだした。
 寂しがりやだから、ひとりで寝るのが嫌になったんだろうな、と真彦さんは思った。
 となると、あの部屋は空くことになる。
 なんだかんだと物が増えてきて、彼の部屋は手狭になっていた。
 渡りに船だと、真彦さんは部屋の権利を譲るように妹に頼んだ。
 妹はあっさりと、その権利を彼に譲った。

 早速、新マイルームで迎える初めての夜、物音に彼は目を覚ました。
 部屋に置かれたクローゼットが、カタカタと鳴っている。
 続いて、バンバン! と激しい炸裂音がした。
 真彦さんは布団の中で目をこらし、耳をそばだてた。
 どこからか、ボソボソと何かを呟く、男の低い声が聞こえる。
 部屋の中を誰かが走り回る音がする。
 声が徐々に彼に近づいてくる。
 彼は飛び起き、元の部屋に逃げ込むと、震えながら眠った。

 翌朝、真彦さんは妹に言った。
「あの部屋、何か変だな……」
 それに対し、妹は真顔で答えた。
「お兄ちゃん、あの部屋は怖いよ」

 結局、その部屋は誰も使わなくなった。

(超-1 2008/「幽霊家族」より改題)

※せんべい猫より
 この話の原題は「幽霊家族」という題名でしたが、家族であることを証明しているのが妹の一言だけと弱く、その妹の体験談にも言及がなされていない為、真彦さんの体験談のみで全体を再構成し、題名も「部屋」と改めさせていただきました。
 改題についてご理解いただければと思います。


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