【リライト】雨が降るとは限らない

2008年04月21日 03:52

 祖母に手を引かれながら、幼い私は山道を歩いていた。
 ほぼ真上から指す日差しが、足下に短い影を作る。
 目の前を行く祖母の足下にも、小さな影。
 私の足下にも、小さな影。

 祖母と私の横を、小さな影が通り過ぎていく。
 またひとつ。
 もうひとつ。
 あるのは影ばかりで、その姿は何も見えない。
 祖母に話しかけようとするが、喉が貼り付いて声が出ない。
 私の手を握る、祖母の手の力が、ぎゅっと強くなる。
 祖母もまた押し黙っている。

 いくつもの、様々な形をした影が、ふたりの横を通り過ぎてゆく。
 男の影。
 女の影。
 子供の影。
 背の高い影。
 太った影。
 そのどれもが、着物を着ているように見える。

 列の最後尾には、頭に大きいかぶり物をし、大きな帯締めのついた着物の裾を引きずった影が、しずしずと進んでゆく。
 その影を最後に、列は山道の向こう側へ消えていった。

(超-1 2008/「雨が降るとは限らない」より)


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