【リライト】苦情

2008年04月21日 03:53

 南野さんが勤める介護施設の二階に入所している、ある入所者から苦情を受けた。
「ゆうべは、白い着物を着た人がたくさん、階段を上り下りしてうるさかった」
 もちろん、夜中にそんな事をする者はいない。

 その翌日、同じ入所者からこんな事を尋ねられた。
「部屋の前をお葬式の行列が通った。誰が死んだんだ?」
 もちろん、施設内でこれ見よがしに葬式を行うことはなく、入所者の前を葬列が通ることなどあり得ない。
 しかしその言葉に、南野さんははっとした。

 その日、一階の個室にいた入所者が亡くなっていたのだ。
 その入所者は危篤状態が続き、いよいよ危ない、と言う状態に陥ったのが昨日。
 あの苦情とタイミングが一致する。

 しかも、苦情を申し入れたあの入所者は、殆ど目が見えず、介助なしでは出歩くことも出来ない。


 後になってびっくりする様な事はよくあるよ、と南野さんは言う。

(超-1 2008/「苦情」より)


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