【リライト】人形と

2008年04月22日 23:29

 私の叔母は以前、古い一軒家に住んでいた。
 ある日から、叔母はその玄関先に置いてある人形が気になりだした。
 下駄箱の上に置かれたガラスケースに入った、三十センチほどの陶製の少女人形。
 丸みのある優しい面差しの、何の変哲もない人形が気になって仕方がない。

 それと同じ頃、妙なことが起こり始めた。
 夜中、叔母が二階の寝室で寝ていると、階下からぼそぼそと小さな話し声が聞こえてくる。
 さらに、みしっ、みしっ、と、階段を上り下りする音も聞こえてきた。
 階段を下りるとすぐ正面に玄関があり、あの人形が置いてある。
 あまりそう言う話を信じない叔父も、その音を聞いていた。
 そんなことが一ヶ月近く続いた。

 ある夜、叔母はトイレに行きたくなり、目を覚ました。
 幸い、二階にもトイレがあったが、しばらく行く決心が付かず、布団の中で思案した。
 思案の結果、彼女は覚悟を決めて部屋を出ると、トイレの扉を開けた。
 しかしそこには、すでに先客がいた。
 女の子が、洋式の便座に腰掛けている。
 その面差しはあの人形にそっくりだった。
「ごめんなさい!」
 叔母は思わずそう言って、トイレのドアを閉めた。

 翌日、知り合いのお坊さんに事情を話すと、早速叔母の家まで来てくれた。
 お坊さんは玄関を通されると、あの人形を一瞥した。
 何やら不可解そうな表情をした彼は、一階を見て回り、階段を上った。
 そして二階の、普段は使われていない和室に入り、押し入れの中を見ると、そこから何かを取り出した。

 それは二十センチほどの長さの、まっすぐな骨だった。

 唖然としている叔母を気にすることなく、お坊さんは骨を袂に仕舞った。
「両方とも、うちで預かりましょう」
 そう言ってお坊さんは、人形も一緒に持って行った。

 その日から、不可解な現象は嘘のように止まった。
 叔母はお坊さんから詳細を聞き出そうかと思ったのだが、その話をする事に躊躇ってしまい、何も聞けなかった。
 現在でも、人形と骨との関連性はわからないままだ。

(超-1 2008/「人形と骨の間は・・」より改題)

※せんべい猫より
 この話の原題は「人形と骨の間は・・」という題でしたが、骨の存在は話の骨子と言える部分で、題名がネタバレとなっていました。
 そのため、題名から「骨」について削り、なおかつ人形以外の存在を臭わせる意味で「人形と」という題に改めさせていただきました。
 改題についてご理解いただければと思います。


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