2008年04月22日 23:36
その日、祖父の新盆を執り行う為、親族で集まって葬儀屋の説明を聞きながら準備を進めていた。
誰一人として祭事に慣れていないのだが、その中でも幽霊の類など一切信じていない叔父は、魂が帰ってくるなんて馬鹿馬鹿しい、とばかりに手伝うそぶりすら見せない。
「では、この提灯に火を入れてから仏壇のあるこのお部屋の窓を少しあけておいて、その窓の外につるしてください。
提灯の明かりを目印に仏様はお帰りになりますから」
葬儀屋さんの説明を聞き流していた叔父に、祖母は提灯を渡し、吊すように頼んだ。
「まったく……窓開けないと入ってこれないのかよ。虫が入るだけだぞ。
いちいち提灯なんぞ掲げなくても、自分の家くらい、わからないわけないじゃないか。
第一、霊なんて……」
「そんなこと言うもんじゃない」
叔父は迷惑そうに不平を言い、祖母に怒られながら提灯を取り付けた。
「お、おい、仏壇の蝋燭見て、見て!」
誰かが不意に大声を上げた。
見ると、仏壇の左右に灯っている蝋燭のうち、左側の火が大きく縦に伸びている。
右側の火は一センチ程度なのに、左側の火は二十センチくらいまで燃え上がっている。
「お爺ちゃんが怒ってるんじゃない? 叔父さんが文句言うからさぁ」
私は叔父に聞こえるように、わざと大声で言う。
他の親族がビデオを回しはじめる。
祖母は仏壇を拝み、念仏を唱える。
その他の親族は、燃え上がる火を見ながら、祖父の帰宅にしみじみとしている。
そんな中、叔父だけは惚けたように座り、その火を見つめていた。
それから、叔父の態度は一変した。
祖父の日課だったゴミ出しや掃除をマメに行い、朝一番に仏壇に線香を供え、供物の交換などを黙々と行うようになった。
ある時、叔父はぽつりと漏らした。
「いるんだ。人は死んでも」
(超-1 2008/「いるんだ」より)
誰一人として祭事に慣れていないのだが、その中でも幽霊の類など一切信じていない叔父は、魂が帰ってくるなんて馬鹿馬鹿しい、とばかりに手伝うそぶりすら見せない。
「では、この提灯に火を入れてから仏壇のあるこのお部屋の窓を少しあけておいて、その窓の外につるしてください。
提灯の明かりを目印に仏様はお帰りになりますから」
葬儀屋さんの説明を聞き流していた叔父に、祖母は提灯を渡し、吊すように頼んだ。
「まったく……窓開けないと入ってこれないのかよ。虫が入るだけだぞ。
いちいち提灯なんぞ掲げなくても、自分の家くらい、わからないわけないじゃないか。
第一、霊なんて……」
「そんなこと言うもんじゃない」
叔父は迷惑そうに不平を言い、祖母に怒られながら提灯を取り付けた。
「お、おい、仏壇の蝋燭見て、見て!」
誰かが不意に大声を上げた。
見ると、仏壇の左右に灯っている蝋燭のうち、左側の火が大きく縦に伸びている。
右側の火は一センチ程度なのに、左側の火は二十センチくらいまで燃え上がっている。
「お爺ちゃんが怒ってるんじゃない? 叔父さんが文句言うからさぁ」
私は叔父に聞こえるように、わざと大声で言う。
他の親族がビデオを回しはじめる。
祖母は仏壇を拝み、念仏を唱える。
その他の親族は、燃え上がる火を見ながら、祖父の帰宅にしみじみとしている。
そんな中、叔父だけは惚けたように座り、その火を見つめていた。
それから、叔父の態度は一変した。
祖父の日課だったゴミ出しや掃除をマメに行い、朝一番に仏壇に線香を供え、供物の交換などを黙々と行うようになった。
ある時、叔父はぽつりと漏らした。
「いるんだ。人は死んでも」
(超-1 2008/「いるんだ」より)




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