2008年04月23日 23:12
学校からの帰り道、昼下がりの通りを家まで歩いてくると、見慣れない老人が立っている。
茶色の作務衣を着た老人は、家の前にある大学病院の修繕工事の風景を、じっと見上げていた。
何気なくその視線を辿ると、病院の外壁に組まれた足場の上で、タンクトップを着た若い作業員があぐらをかき、おにぎりを頬張っていた。
高さは五階くらいだろうか。その堂々とした姿はリビングでくつろいでいるかのようだ。
「うちの孫ですよ」
老人が言った。その視線は若い作業員に注がれたままだ。
「で、あれがうちの家内」
老人がある一点を指さした。
若い作業員のいる足場の端に、老婆の姿があった。
藍色の着物を着た、上品な雰囲気の老婆は、てくてくと孫に向かって歩いていく。
そしてその後ろに辿り着くと、彼の方をぽんと叩き、うんうんと頷いた。
叩かれた本人は、もぐもぐ動かしていた口の動きを止め、ふうう、と大きく深呼吸をしながら伸びをし、再びおにぎりを頬張った。
老婆は満足げな笑顔のまま、すうと消えた。
はっとして老人の方を見ると、その姿も消えていた。
(超-1 2008/「工事現場」より)
茶色の作務衣を着た老人は、家の前にある大学病院の修繕工事の風景を、じっと見上げていた。
何気なくその視線を辿ると、病院の外壁に組まれた足場の上で、タンクトップを着た若い作業員があぐらをかき、おにぎりを頬張っていた。
高さは五階くらいだろうか。その堂々とした姿はリビングでくつろいでいるかのようだ。
「うちの孫ですよ」
老人が言った。その視線は若い作業員に注がれたままだ。
「で、あれがうちの家内」
老人がある一点を指さした。
若い作業員のいる足場の端に、老婆の姿があった。
藍色の着物を着た、上品な雰囲気の老婆は、てくてくと孫に向かって歩いていく。
そしてその後ろに辿り着くと、彼の方をぽんと叩き、うんうんと頷いた。
叩かれた本人は、もぐもぐ動かしていた口の動きを止め、ふうう、と大きく深呼吸をしながら伸びをし、再びおにぎりを頬張った。
老婆は満足げな笑顔のまま、すうと消えた。
はっとして老人の方を見ると、その姿も消えていた。
(超-1 2008/「工事現場」より)




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