2008年04月23日 23:13
村尾さんは、友人達と映画を観に行った。
彼らがスクリーンから五列目あたりの席に座ると、間もなくブザーが鳴り、館内の照明が落とされた。
そしてスクリーンにマナー案内や新作映画の予告が流れはじめた。
すると、そのスクリーンの真下に小さな影がちょろちょろしている。
どうも六歳くらいの子供のようだが、シルエットからは性別までわからない。
観客の誰かの子供だろうか。
その子供は館内を落ち着きなく走り回り、仕舞いには最前列の観客の上によじ登り、肩車をはじめた。
(なんだ、あの子?)
村尾さんは文句を言おうと思った。
しかし隣に座る友人は、その影を気にすることなくスクリーンに見入っている。
(あれ?)
彼は再びスクリーンの方を見た。
そこには変わらず子供の影が走り回っていた。
しばらくうろちょろしていた子供が、今度はひとりの観客の膝の上に立ち上がり、ぴょんぴょんと跳ね出した。
しかし、乗られている観客は痛がる風でもなく、その影の向こうに映る映像に見入っていた。
その観客だけではなく、誰一人として、その影に気付いていない。
(うーわ、これって……)
本編が上映されてからも、小さな影は右端に消えたかと思えば左端から現れたりと、縦横無尽に動き回っていた。
おかげで、村尾さんはその日の映画の内容が全く頭に入らなかった。
(超-1 2008/「うろちょろ」より)
彼らがスクリーンから五列目あたりの席に座ると、間もなくブザーが鳴り、館内の照明が落とされた。
そしてスクリーンにマナー案内や新作映画の予告が流れはじめた。
すると、そのスクリーンの真下に小さな影がちょろちょろしている。
どうも六歳くらいの子供のようだが、シルエットからは性別までわからない。
観客の誰かの子供だろうか。
その子供は館内を落ち着きなく走り回り、仕舞いには最前列の観客の上によじ登り、肩車をはじめた。
(なんだ、あの子?)
村尾さんは文句を言おうと思った。
しかし隣に座る友人は、その影を気にすることなくスクリーンに見入っている。
(あれ?)
彼は再びスクリーンの方を見た。
そこには変わらず子供の影が走り回っていた。
しばらくうろちょろしていた子供が、今度はひとりの観客の膝の上に立ち上がり、ぴょんぴょんと跳ね出した。
しかし、乗られている観客は痛がる風でもなく、その影の向こうに映る映像に見入っていた。
その観客だけではなく、誰一人として、その影に気付いていない。
(うーわ、これって……)
本編が上映されてからも、小さな影は右端に消えたかと思えば左端から現れたりと、縦横無尽に動き回っていた。
おかげで、村尾さんはその日の映画の内容が全く頭に入らなかった。
(超-1 2008/「うろちょろ」より)




コメント
コメントの投稿