【リライト】おぼろげな

2008年04月01日 23:26

 飛鳥さんは小さい頃、一人で留守番をしながら絵を描いていた。

 夕方にさしかかり、部屋が暗くなってきた。
 電気を点けようと立ち上がり、壁際のスイッチのそばに行った。
 そこからはリビングが見える。
 誰もいないリビング。のはずが。
 L字型ソファの背もたれの上に、奇妙なものがいる。
 黒いシルエットは、おぼろげながら人の形に見える。
 それが、背もたれの上で、ヤンキーのような「うんこ座り」をしている。
 真っ黒な顔にぼこっと穿たれたような眼窩が、彼女を見据えている。
 あ、なんかおる。
 彼女はそう思ったが、まるっきり興味がなかった。
 電気を点けると、黒い人影に背を向け、絵を描きに戻った。

「昔の事やし、あんまりハッキリとは憶えてないねんけどな」

 いや、じゅうぶんはっきり憶えてるやん。

(超-1 2008/「おぼろげな」より)


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