【リライト】ちょっと拝借

2008年04月24日 23:26

 晴子さんは高校時代の親友の清美さんと、二人で旅行に行った。
 旅行先は観光地としてポピュラーな場所で、有名な大きな滝がある。
 そこは観光スポットとしてだけではなく、自殺の名所としても知られていた。
 二人がその滝を観光していると、近くのカップルが二人に気付き、女の方がカメラを持って近づいてきた。
「すいません、滝をバックに写真を撮ってもらいたいんですけど」
 晴子さんは快くカメラを受け取ろうとした。

「お前らに、ここで写真を撮る資格はない」

 清美さんが突然、カップルに向かって言い捨てた。
 その口調は、普段の明るく優しい彼女とはまるで違い、厳しく凛としたものだった。
 ましてや、相手は赤の他人である。
 言われた女も、目を丸くしている。

「立ち去れ。写真など撮ったらどういう事になるか、わかっているのか?」

 尚も清美さんは続けた。
 女は怪訝そうな顔をしていたが、大人しく引き下がり、彼の元へ戻っていった。
「き、清美あんたどうしちゃったの?」
「あれ……私、どうしたんだろ。今なんか、ぼーっとしちゃって……あれ? あれ?」
 そう首をかしげる清美さんは、さっきまでと違い、いつもの彼女に戻っていた。

 清美さんはその時、自分が何を言ったのかを全く憶えていなかった。
 晴子さんは彼女を心配して、本当のことは言わずに済ませた。
 旅行はそのまま続けられたが、清美さんに異変が現れることはなかった。

(超-1 2008/「ちょっと拝借」より)


コメント

    コメントの投稿

    (コメント編集・削除に必要)
    (管理者にだけ表示を許可する)

    トラックバック

    この記事のトラックバックURL
    http://senbeineko.blog45.fc2.com/tb.php/226-e207f05f
    この記事へのトラックバック


    最新のエントリー