【リライト】ひとつめ

2008年04月25日 23:15

 絹代さんが小学生低学年くらいの頃、母に連れられて、海辺の町に嫁いだ姉の佐和子さんの元を訪れた。
 母達が会話をはじめると、山奥暮らしの絹子さんは居ても立ってもいられず、その家の裏手に広がる浜辺に遊びに行った。
 貝殻集めをしたり、蟹を捕まえたり、岩場の中を覗いたりしている内、彼女は日が落ち始めていることに気付いた。
 もう帰らないと叱られちゃう。
 そう思った時。

「嬢ちゃん」

 後ろから呼びかけられて、彼女は振り向いた。
 そこには、ふんどし一丁にねじり鉢巻きという出で立ちの、知らないおじさんが立っていた。
 その顔には、口がひとつ、鼻がひとつ、そして、大きな目がひとつだけ。
 彼女はちょっと驚いたが、こういう人もいるんだな、くらいに思った。
「嬢ちゃん、そろそろ家に帰んな。でないと、さらわれっどぉ」
 おじさんのその一言に、急に怖くなった。
 彼女は貝殻をハンカチにくるむと、おじさんに背を向けて家の方に走り出した。

 家の近くに来ると、彼女を迎えに来た母と姉の姿が見えた。
「もう帰るで。あれ、この子はまたこんなに貝殻ばっかり」
「姉ちゃん」
「え?」
「あのね、目がひとつしか無いおじちゃんがね」
 そう言いながら浜辺を振り返ったが、そこにあのおじさんの姿はなかった。
「目がひとつしかないおじちゃんがね、もう帰れって」
 彼女はさっきの出来事一所懸命に伝えたが、あっさり否定された。
「何言うてるの? 浜にはお前しかいなかったよ」

(超-1 2008/「ひとつめ」より)


コメント

  1. 山際 みさき | URL | -

    えーと

    ×貝殻厚め
    ○貝殻集め

    によろしくお願いいたします。

    "人にさらわれっどぉ"
    というのは…そのおじさんが自分で自分を
    "人ではない"
    と言っているかの様になってしまいますね。

  2. 山際 みさき | URL | -

    直して下さいましたね

    ありがとうございます。

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