【リライト】キャッチ

2008年04月26日 23:35

 大原さんがまだ小学二・三年生の頃、お盆か何かの為、家族全員で父方の実家に行ったことがあった、
 実家は農家を営んでおり、米や野菜、梨などを栽培していた。
 家から少し離れたところには、トマトを育てるビニールハウスがある。
 敷地の外れには納屋があり、その横に、売り物にならないトマトがごろごろと投げ捨てられていた。

 大人達が宴会を始めると、暇をもてあました大原さんは納屋の近くに行った。
 納屋のそばには田んぼがあり、その横に幅五十センチほどの用水路が流れている。
 その深さは子供の膝丈程度。
 彼は捨てられているトマトを拾うと、用水路に浮かべた。
 トマトは水の流れに乗って、ぷかぷかと下流へ流れていく。
 彼はその様子を眺めるのが楽しくて、間隔を開けてトマトを用水路へ投げ入れ続けた。
 そのうちに、彼は妙なことに気付いた。

 ぷかぷかと流れていくトマトが、十メートルほど先にさしかかると、
 ぽちゃん。
 と音を立てて沈んでしまう。
 不思議に思ったものの、わざわざ確認しに行くほど好奇心があったわけではない。
 トマトを投げては、沈む様子を見ているだけだった。

 そのうち、さすがに飽きてきた彼は、最後の一個として少し大きめのトマトを水面に浮かべた。
 それは流れに乗って、どんどん下流に向かっていく。
 そして十メートルほど過ぎたあたりで。
 ぽちゃん。
 音を立ててトマトが沈む時、さっきまで見えなかったものが見えた。

 野球のグローブをはめた手がトマトを掴み、沈めようとしていた。

 しかし、トマトが大きすぎたのか、一度沈んだトマトは再び浮き上がり、さらに下流へと流れていった。

(超-1 2008/「キャッチ」より)


コメント

    コメントの投稿

    (コメント編集・削除に必要)
    (管理者にだけ表示を許可する)

    トラックバック

    この記事のトラックバックURL
    http://senbeineko.blog45.fc2.com/tb.php/241-c37e6cd7
    この記事へのトラックバック


    最新のエントリー