【リライト】痴漢

2008年04月27日 23:43

「やめてください!」
 隣に立っていた女が、急に叫んだかと思うと、しきりに背後を気にしている。
 座席は埋まっているものの大して混んでいない電車の中で、女のそばに立っているのは俺だけ。
 その俺も携帯電話をいじりながら吊革に掴まっているため、女にちょっかいを出す余裕はない。
 車内の誰もがその状況をわかっているようで、女にいぶかしげな視線を向けている。
 当の本人はそれに気付くそぶりも見せず、俺から離れるように移動した。
 俺じゃないっつーの。
 移動先の近くにいた乗客は、その女を避けるように移動していた。

「いい加減にしてください!」
 間もなく、また女が叫び、背後を振り返っている。
 もはや周囲には誰もいない。
 女もようやくそれに気付いたのか、電車が駅に着くと逃げるように降りていった。

(超-1 2008/「痴漢」より)


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