【リライト】忘れ物

2008年04月27日 23:45

 川村さんは以前、大手タクシー会社の運転手をしていた。

 ある夜、タクシー乗り場で客待ちをしていた彼は、後部座席に赤い紙バッグがあることに気付いた。
 車から降りて後部ドアを開け、紙バッグを覗き込むと、その中には古びた男物の黒い革靴が入っていた。
 前に乗せたお客の忘れ物だと思い事務所に届けようと思ったが、タイミング悪くお客が来た為、バッグを助手席の足下に移動させるとタクシーを走らせた。

 目的地でお客を降ろすと、川村さんは事務所に戻った。
 車庫にタクシーを止め、バッグの持ち手を掴んだ。
 その途端、バッグの中から凄まじい女の絶叫が響き、ずしりと重くなった。
 彼は慌ててバッグを放り出したが、地面に落ちて横倒しになったバッグが蠢いている。

 呻き声を上げながら、何かがバッグの中から這いずり出そうとしている。

 川村さんは悲鳴を上げながら、事務所の中へ逃げ込もうとした。
 憶えているのはそこまでだった。

 電話番をしていた同僚の呼びかけに、彼は意識を取り戻した。
 その同僚とともに紙バッグを見に行ったが、その中には何も入っていなかった。

(超-1 2008/「忘れ物」より)


コメント

  1. 山際 みさき | URL | -

    "意識をとりもどした"

    と書くと、それまで気絶していたみたいになりますね。

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