【リライト】チェック

2008年04月27日 23:46

 その日は蒸し暑い上に夕立が重なり、ずぶ濡れになって家に帰った。
 髪の毛を拭いて部屋着に着替えると、お風呂のお湯が沸くまで自室で暇をつぶしていた。
 その時、両肩がずしりと重くなった。
 誰かに押さえつけられるような、指のような感触が肩に食い込む。

 スンスン、スンスンスンスン。

 耳元で、小刻みに鼻を鳴らしながら息を吸い込む音が聞こえた。

 ……はぁ。

 ややあって短い溜息が聞こえ、肩の重さが消えた。
 あたりに人の姿はない。
 なんとなく、自分の髪の毛を鼻に当て、臭いを嗅いでみる。
 生乾きの雨と汗の混じった臭いが鼻をつく。
 確かにこれは、女として、ちょっと、ねぇ。

 お湯が沸き、早速体を綺麗さっぱり洗い流し、髪を隅々まで丁寧に乾かすと、部屋に戻った。
 その途端、また肩ががっちりと押さえつけられた。

 スンスン、スンスンスンスン。
 ……はぁ。

 その溜息は入浴前と違い、なんだか陶然としているようだった。
 満足したのか、すぐに肩の重みが消えた。


 それからしばらく経ったある日、夏風邪を引いて丸二日間寝込んだ。
 熱も下がったしお風呂でさっぱりするか、と上半身を起こした時、また肩を押さえつけられた。

 スンスン、スンスンスンスン。
 ……はぁ。

 落胆するような溜息が漏れ、解放される。
 髪の毛の臭いを嗅ぐと、あの夕立の日以上にまずい臭いだった。
 すぐにお風呂に入り、二日分の汗を洗い流し、リンス、コンディショナー、乳液で髪と肌を整える。
 綺麗に髪をとかしてゆっくりと乾かし、心身ともにすっきりすると部屋に戻った。
 するとまた、肩に手の感触が食い込む。

 スンスン、スンスンスンスン。
 ……はぁ。

 満足げな溜息とともに、体が解放される。
 何なのよ、いったい。

 ……そういえば、弟が広い部屋が欲しいって言ってたっけ。
 この八畳間を、弟に譲る決心がついた。

(超-1 2008/「チェック」より)


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