【リライト】エレベーターで

2008年04月27日 23:51

 富川君が小学校高学年の頃、友達の間で「エレベーターダッシュ」という遊びが流行った。
 エレベーターダッシュとは、エレベーター組とダッシュ組の二組に分かれ、同じ階から同時にスタートしどちらが先に着くか、という単純な遊びだ。
 大人に見つかると叱られたが、住んでいた団地のエレベーターがその速度・階段が近いこと・同じ団地に住む友達がいること等の好条件が重なり、彼らは懲りずにその遊びを続けていた。

 その日のエレベーター組は友人、階段組は富川君。
 スタート地点は一階で、三階までの速さを競うこととなった。
「じゃ、いくぞ!」
 友達が掛け声とともにエレベーターのボタンを押した。
 彼を乗せたエレベーターの扉が閉まりだしたが、彼の後ろにお婆さんが立ち、にこにこと笑っている。
 やべっ、怒られるかも。
 そう思いながらも、富川君は階段を駆け上った。
 三階に到着しエレベーターを見ると、まだ到着していない。
「やったぁ!」
 彼が勝利の雄叫びを上げると、間もなくエレベーターが到着した。
 が、中に乗っていたのは友人ひとりだけ。
「あれ? 一緒にいたおばあちゃんは?」
「え? 乗っていたのは僕だけだよ」
 友人の話では、彼がエレベーターに乗り込んだ時から、ボックスの中には誰もいなかったのだという。

(超-1 2008/「エレベーターで」より)


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