【リライト】落成式に出たモノ

2008年04月27日 23:52

 今から二十五年ほど前の五月、関東のある中学校に新しい体育館が完成した。
 その完成を記念して、館内に全校生徒を集め、有名な体操選手を招待した大々的な落成式が催された。

 その体育館の最大の自慢は、天井に収納可能な一対のバスケットゴールで、式の最中にもゴールが降りてくるデモンストレーションが疲労され、生徒達が歓声を上げた。
 一度下ろされたゴールはそのままにされ、式は尚も続いたが、徐々に生徒達がざわつきはじめた。

 どこからか、バスケットボールくらいの大きさの丸い物が館内に入り込み、空中に浮いている。
 飴色の半透明なそれは、水のように輪郭が不定型に波打ち、短い尾を引きながらバスケットゴールの輪を何度もくぐりはじめた。
 過半数の生徒達が見守る中、それはしばらく遊ぶように輪を出入りすると、窓の外へ飛び去っていった。
 それは時間にして、十分程度の間の出来事だった。

 それを目撃したのは生徒達だけで、教師達は全く気付いていなかった。
 生徒達は互いに目撃した物の話をしたが、それぞれ見え方に差が出ていた。
 ある生徒には、それはただの丸い人魂の様に見えていた。
 ある生徒には、それは笑いながら飛ぶ男の生首に見えていた。
 ある生徒には、それは無表情な老人の生首に見えていた。
 生徒達は、互いに首を捻り合ったという。

(超-1 2008/「落成式に出たモノ」より)


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