2008年04月27日 23:54
平野さんはその頃、様々なトラブルに頭を悩ませていた。
仕事上の重要な書類が、さっきまで手元にあったはずなのに紛失する。
やたらと他人の喧嘩に巻き込まれる。
注文した覚えのない通販商品が届く。
誰もいない歩道を歩いていると、不意に耳元で声がする。
眠っていると、姿の見えない何者かに首を絞められ、意識を失う。
ひとつひとつは大きな事件とは言えないのかもしれないが、それが余りにも連続して発生し続けた為、すっかり疲弊していた。
彼は落合さんという男性とルームシェアをしていたのだが、その落合さんも出逢った当初のはつらつさがなくなり、すっかりふさぎ込むようになってしまった。
思い悩んだ平野さんは、黒田さんという友人に相談をした。
黒田さんは当時、駆け出しの陰陽師だった。
平野さんのマンションを訪れた彼は、まず部屋に溜まった不浄を祓う為、祝詞を唱えた。
平野さんと落合さんは手を合わせて祝詞を聞いていたが、途中、落合さんは体調を崩して自室に戻った。
祝詞そのものは部屋全体に効果がある為、いずれ落合さんも回復するだろうと判断し、黒田さんは祝詞を続けた。
次に彼は、平野さんに誓詞を記した紙を渡し、署名をさせた。
それは現世常世問わずあらゆる災厄に対し、署名した者へ災いを起こさせない、あるいは災いそのものを排除する効果があるという。
場合によっては、それらを味方に付けることさえ出来るらしい。
こうして、全ての作法を終えると黒田さんは帰っていった。
それから五日後、落合さんが亡くなった。
飛び降り自殺だった。
それと同時に、平野さんを苦しめてきたトラブルが嘘のように解消されはじめた。
自分の抱えていた何かが、落合さんに降りかかり、身代わりになったのではないか。
平野さんは酷く落ち込んでいたが、徐々にその傷も癒えていった。
やがて仕事も順調に進むようになり、心身が落ち着いてきた彼は引越を決意した。
一方、その様子を見届けた黒田さんの中で、ある疑念が形を結びつつあった。
彼が平野さんに施した作法は、あらゆる災いを平野さんから退ける為のもの。
それは現世常世の差を問わず発動する。
その対象に、落合さんも含まれていたのではないか。
なぜなら、ルームシェアを始めて間もなくトラブルが始まり、落合さんの死とともにそのトラブルが収まっている。
平野さんには告げていないが、聞いたトラブルの中のいくつかは、落合さんに関わる部分が大きかった。
ならば、落合さんの存在そのものが災厄とみなされ、排除されたのではないだろうか。
(超-1 2008/「理」より)
仕事上の重要な書類が、さっきまで手元にあったはずなのに紛失する。
やたらと他人の喧嘩に巻き込まれる。
注文した覚えのない通販商品が届く。
誰もいない歩道を歩いていると、不意に耳元で声がする。
眠っていると、姿の見えない何者かに首を絞められ、意識を失う。
ひとつひとつは大きな事件とは言えないのかもしれないが、それが余りにも連続して発生し続けた為、すっかり疲弊していた。
彼は落合さんという男性とルームシェアをしていたのだが、その落合さんも出逢った当初のはつらつさがなくなり、すっかりふさぎ込むようになってしまった。
思い悩んだ平野さんは、黒田さんという友人に相談をした。
黒田さんは当時、駆け出しの陰陽師だった。
平野さんのマンションを訪れた彼は、まず部屋に溜まった不浄を祓う為、祝詞を唱えた。
平野さんと落合さんは手を合わせて祝詞を聞いていたが、途中、落合さんは体調を崩して自室に戻った。
祝詞そのものは部屋全体に効果がある為、いずれ落合さんも回復するだろうと判断し、黒田さんは祝詞を続けた。
次に彼は、平野さんに誓詞を記した紙を渡し、署名をさせた。
それは現世常世問わずあらゆる災厄に対し、署名した者へ災いを起こさせない、あるいは災いそのものを排除する効果があるという。
場合によっては、それらを味方に付けることさえ出来るらしい。
こうして、全ての作法を終えると黒田さんは帰っていった。
それから五日後、落合さんが亡くなった。
飛び降り自殺だった。
それと同時に、平野さんを苦しめてきたトラブルが嘘のように解消されはじめた。
自分の抱えていた何かが、落合さんに降りかかり、身代わりになったのではないか。
平野さんは酷く落ち込んでいたが、徐々にその傷も癒えていった。
やがて仕事も順調に進むようになり、心身が落ち着いてきた彼は引越を決意した。
一方、その様子を見届けた黒田さんの中で、ある疑念が形を結びつつあった。
彼が平野さんに施した作法は、あらゆる災いを平野さんから退ける為のもの。
それは現世常世の差を問わず発動する。
その対象に、落合さんも含まれていたのではないか。
なぜなら、ルームシェアを始めて間もなくトラブルが始まり、落合さんの死とともにそのトラブルが収まっている。
平野さんには告げていないが、聞いたトラブルの中のいくつかは、落合さんに関わる部分が大きかった。
ならば、落合さんの存在そのものが災厄とみなされ、排除されたのではないだろうか。
(超-1 2008/「理」より)




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