2008年04月29日 00:00
八重子さんは看護師歴三十年を超えるベテランである。
ある日、彼女の勤める診療所に、八十五歳のお婆ちゃんがやって来た。
腰痛が悪化し、身動きを取ることがままならなくなり、殆ど寝たきり状態での入院となった。
お婆ちゃんは個室を希望したが、空室がなかった為、とりあえず五人部屋に入ってもらうことになった。
その深夜、お婆ちゃんからナースコールが入った。
駆けつけると、お婆ちゃんは真っ青な顔をして震えている。
何でも、白いコートを着た女が彼女の手を引っ張るのだという。
怖くて眠れない、早く個室に移してくれ、と懇願するお婆ちゃんをどうにかなだめ、我慢してもらうほかなかった。
翌日になり個室の空きが出来たので、早速お婆ちゃんに移ってもらった。
ところが、その日の深夜にも、お婆ちゃんからのナースコールが入った。
あの女がお婆ちゃんの足元に立ち、じっと見下ろすのだという。
それは翌日も、そのまた翌日も続いた。
それも決まった時間、午前二時頃に女は姿を現した。
その度にお婆ちゃんに泣きつかれるのだが、八重子さん達にはどうすることも出来ない。
そして入院から七日目。
深夜になり、詰所にお婆ちゃんがやってきた。
「またあの女が出たんだよ。何とかならないのかねぇ看護婦さん。毎晩怖くて眠れないんだよ……」
「そうは言ってもねぇ……あれっ?」
八重子さんはとんでもないことに気付いた。
今日まで身動きひとつ出来なかったはずのお婆ちゃんが、どうして詰所の前にいるの?
「おばあちゃん、歩けるの?」
八重子さんにそう言われて、お婆ちゃんは自分の下半身を見た。
「……ほんとだ!」
あんなに酷かった腰痛が、嘘のように回復していた。
お婆ちゃんはそれから三日ほどして、元気に退院していった。
八重子さんは今でも、定期的に通ってくるお婆ちゃんと顔を合わせると、あの時の話になる。
おばけのおかげで腰が治ったね、と言って、二人で笑うのだそうだ。
(超-1 2008/「霊看」より)
ある日、彼女の勤める診療所に、八十五歳のお婆ちゃんがやって来た。
腰痛が悪化し、身動きを取ることがままならなくなり、殆ど寝たきり状態での入院となった。
お婆ちゃんは個室を希望したが、空室がなかった為、とりあえず五人部屋に入ってもらうことになった。
その深夜、お婆ちゃんからナースコールが入った。
駆けつけると、お婆ちゃんは真っ青な顔をして震えている。
何でも、白いコートを着た女が彼女の手を引っ張るのだという。
怖くて眠れない、早く個室に移してくれ、と懇願するお婆ちゃんをどうにかなだめ、我慢してもらうほかなかった。
翌日になり個室の空きが出来たので、早速お婆ちゃんに移ってもらった。
ところが、その日の深夜にも、お婆ちゃんからのナースコールが入った。
あの女がお婆ちゃんの足元に立ち、じっと見下ろすのだという。
それは翌日も、そのまた翌日も続いた。
それも決まった時間、午前二時頃に女は姿を現した。
その度にお婆ちゃんに泣きつかれるのだが、八重子さん達にはどうすることも出来ない。
そして入院から七日目。
深夜になり、詰所にお婆ちゃんがやってきた。
「またあの女が出たんだよ。何とかならないのかねぇ看護婦さん。毎晩怖くて眠れないんだよ……」
「そうは言ってもねぇ……あれっ?」
八重子さんはとんでもないことに気付いた。
今日まで身動きひとつ出来なかったはずのお婆ちゃんが、どうして詰所の前にいるの?
「おばあちゃん、歩けるの?」
八重子さんにそう言われて、お婆ちゃんは自分の下半身を見た。
「……ほんとだ!」
あんなに酷かった腰痛が、嘘のように回復していた。
お婆ちゃんはそれから三日ほどして、元気に退院していった。
八重子さんは今でも、定期的に通ってくるお婆ちゃんと顔を合わせると、あの時の話になる。
おばけのおかげで腰が治ったね、と言って、二人で笑うのだそうだ。
(超-1 2008/「霊看」より)




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