【リライト】ちょっとかわいそうな話

2008年04月29日 00:03

 その日、八重子さんは診療所の夜勤担当だった。
 彼女が詰所で仕事をしていると、先に仮眠を取っていたはずの若い男性看護師が、酷く慌てた様子で飛び込んで来た。
 怯えながら、彼はその場にいる仲間達に話を始めた。

 彼が仮眠室で寝ていると、金縛りにあって目が覚めた。
 辺りをうかがうと、彼のそばに男が立っている。
 彼は怯え、とにかくどうにかしないとという思いで、誰でも知っている念仏を唱えた。
 南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経……。

「それでは効かない」

 男はそう言って、勝ち誇ったかのような笑い声をあげた。
 彼はがむしゃらに金縛りを振りほどき、脱兎のごとく逃げ出した。

 そんな彼は、話を聞いた仲間達にも笑われ、踏んだり蹴ったりだった。

(超-1 2008/「ちょっとかわいそうな話」より)


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