【リライト】がらがら、ちーん

2008年04月04日 01:17

 丸の内八重洲ビル。
 昭和四年に建築された、地下一階、地上八階のオフィスビルだ。
 二階までは茶色の石組みのような外観で、三階から白く色が違っているのが面白い。
 そのモダンなデザインから、ドラマ「HERO」では、主人公の勤める法律事務所が入ったビルという設定で、撮影にも使用された。

 このビルの中に、小倉さんの勤める会社があった。
 一般事務から雑用までこなす彼女は、会社全体が忙しい時期でもあったために、ほぼ毎日残業が続いていた。
 気づけば、だだっ広いオフィスの中に、彼女一人。
 一応、年頃の女の子なのにぃ。
 愚痴を聞いてくれる人もいない。
 戸締まりをし、オフィスを出て、エレベーターのボタンを押した。

 がらがらがら……。

 通路の奥から、重い音が聞こえてくる。
 地下鉄がホームに近づく時のような音。

 がらがらがら……がたっ、ちーん!

 エレベーターが止まった時の、ベルの音が聞こえた。
 しかし、目の前のエレベーターの回数表示はまだ六階を指している。
 そういえば。
 八重洲ビルには二基のエレベーターがある。
 ひとつは目の前にある、普通のビルにあるようなエレベーター。
 もうひとつは、映画「エンゼル・ハート」などに出てくるような、鉄格子のような古く開放的なエレベーター。
 上部に回数表示のアナログメーターがつけられているそのエレベーターは、扉が鎖で固定され、
『このエレベーターは老朽化の為、現在使用できません』
 というプラカードがぶら下がっている。
 小倉さんは思い切って、見に行ってみた。
 エレベーターはいつもと変わらず閉じられている。ボックスもこの階には止まっていない。
 念のためボタンを押したが、光は点かなかった。

 七十七年の歴史を誇った八重洲ビルだったが、平成十八年、再開発計画の為に取り壊されてしまった。
 その跡地にはは、明治二十七年にその場所にあった「三菱一号館」という、日本で最初に造られたビルを復元する予定になっている。

(超-1 2008/「がらがら、ちーん」より)

※せんべい猫より
 舞台となった建物について検索してみたところ、建物自体の成り立ちや現状が非常に興味深いものであることが解りました。
 リライトにあたり、場所の特定は体験者および関係者に与える悪影響はないものと判断し、場所の実名表記に踏み切りました。
 以下のリンクで外観と内部の様子を見る事が出来ますので、興味のある方は参照してみてください。
丸の内八重洲ビル外観
丸の内八重洲ビル内部


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