【リライト】怒風

2008年04月30日 20:05

 ある時田上さんは、友人の倉本さんに声をかけられた。
「時間あるでしょ?」
 その言葉を翻訳すると、『黙って私についてきなさい』。
 田上さんが連行された先は、市街地から離れた山道の奥にある神社だった。

 本殿へ続く階段を登るのは、彼女達ふたりだけ。
 二百段はあろうかという階段の中程に差し掛かった時、田上さんの背中に追い風が吹いた。
 その勢いは強く、ぐいぐい押されながら、彼女は一気に本殿まで駆け上ってしまった。
 田上さんにかなり遅れて、倉本さんが息を切らせながら階段を上ってくる。
 どういうわけか、倉本さんには追い風の影響がなかったようだ。

 境内は思ったよりも広く、案内図によると野草園とも繋がっており、散策には丁度良い。
 息の整った倉本さんを先頭に、二人はあちこちを見て回った。
 二十分ほどあたりを散策していると、開けた場所に辿り着いた。

 そこには、小さな祠が十数個並んでいる。
 不意に倉本さんが、そのうちのひとつに近づいた。
 その様子がどことなくおかしい。
「ちょっと……どうしたのよ?」
 田上さんは声をかけたが、倉本さんはそれを無視し、祠の木戸に手をかける。
「女の神様って大抵美人だけどさぁ、性格悪いよね」
 そう言いながら、彼女が木戸を開いた。
 その瞬間、開かれた木戸の奥から突風が吹いた。
 突風は下から上へ砂粒を巻き上げ、彼女達の身体に叩き付ける。
 体温を奪うような肌寒い突風に、田上さんは鳥肌がたった。
 怨嗟の風。
 そう感じた彼女は顔を庇いながら倉本さんの手を引くと、一目散に逃げ出した。

 それから二日間、倉本さんは原因不明の高熱で寝込んだ。
 追い風を受けていた田上さんまで、どういうわけか同じ目にあった。

(超-1 2008/「怒風」より)


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