【リライト】ズーム・イン!

2008年04月04日 01:41

 郊外に新しく出来たショッピングモール。
 その最上階のレストランの窓際にいるカップル。
 どこにでもある風景。だが、ちょっと違った。
「なあおい、あそこ見ろよ」
 彼……森川君が指さす先には、とある丘が見える。
「あの丘さ、首切り場って地元じゃ呼ばれてるんだよ。
 友達から聞いたんだけど、あそこを手入れしようとした造園業者が、祟りで死んだらしいぜ」
 自慢げに仕入れた知識を披露すると、彼女は顔をしかめた。
 彼は筋金入りの怪談ジャンキー。
 口癖は、「一度でいいから幽霊が見たい」。

「何か見えねえかな?」
「祟られるよ」
 呆れ果てた彼女も気にせず、彼は草ぼうぼうの丘を眺めて、何かが出てくるのを期待していた。
 こうなると、彼女の四方山話も耳に届かない。
 食い入るように外を見る。
 ん?
 丘がさっきより近い気がする。
 いや、気のせいじゃない。
 丘を含めた風景が迫ってくる。
 まるで、窓が拡大機能を働かせたかのようだ。
 ぐんぐんと丘が眼前に迫る。
 雑木の節の模様まで確認できるほど、窓ガラスいっぱいに丘を臨む風景が広がった。
 その時、首筋がぞくっとして、身をすくめた。
 彼の体を、すぱっ、と、風が通り抜けた。
 顔を上げると、窓の外の風景は元に戻っていた。

 翌朝、目を覚ますと首が動かない。
 触ると、ガチガチに筋肉が固まっている。
 どうにか動かすと、洒落にならない激痛が走る。
 同僚には、首切り場見てて首が痛くなるなんてベタすぎだろ、とバカにされる始末。
 そんな彼の仕事はドライバー。
 肩こりに効く塗り薬も効果がなく、進路確認が拷問へと変わり果て、その日は地獄のドライブとなった。

「なあおい、この間レストラン行った時さあ」
 後日、楽しげにその話をはじめた森川君に、彼女は呆れ果てた。

(超-1 2008/「ズーム・イン!」より)


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