2008年04月04日 01:44
「実は私も好きなんです。怖い話」
おどおどとした口調で、杉本さんは少し恥ずかしそうに言った。
「時々、夫婦でスポット巡りにも行くんですよ。
この間は、小坪トンネルと、その上にあるって言われている『サリーちゃんの家』……知ってますか?
それと、あと、その近くにある火葬場にも、出るって噂がありますよね。それを見に行ったんですよ。
トンネルと火葬場は見てきたんですけど、『サリーちゃんの家』は見つけられませんでしたよ」
小坪トンネルは、タレントのキャシー中島さんの話で一躍有名となった心霊スポットだ。
その上の山のそばにある火葬場も、いくつかの目撃証言が聞かれる場所。
『サリーちゃんの家』は、探すと見つからず、迷い込むと薄気味悪い子供に囲まれるという場所で、稲川淳二の『メリーさんの館』の本当の場所ではないかと噂されている。
いずれも怪談マニアなら聞いた事があるであろう場所だ。
杉本さんは夫婦で、そういうスポットの情報を見つけては探索に行っているという。
私は本で仕入れた話を杉本さんに語った。反応は予想以上に良好だった。
嬉しくなった私は、ネタ元となった手持ちの怪談本とDVDをひとつずつ、彼に貸し出した。
翌日、彼は満面の笑みを浮かべ、ぺこぺこと頭を下げながら、それらを返してくれた。
その影響か、スポット巡りの熱が再燃したようで、予定はないのか聞いてみると、
「ええ、ぼちぼちと」
と応えてくれた。
「今度の連休には、ちょっと遠征しようと思ってるんですよ」
目的地はどこですか? と聞くと、
「ナイショです」
と意味ありげな笑みを浮かべた。
なんとなく思い当たる節はある。でも、まさか。
「連休明けには成果をお話ししますよ」
その彼の言葉は、実現する事はなかった。
連休が明けたオフィスに、彼の姿はなかった。
彼の家に電話しても、誰も出なかった。
三ヶ月後、彼の上司が、彼の退社を皆に告げた。
奥さんが精神を煩い、その世話の為だという。
「でもな」
昼食の席で、上司が紫煙を燻らせながら漏らした。
「あいつも、何かおかしかったんだよ」
彼は行ってしまったのだろうか。
本とDVDに大きく取り上げられていた場所……樹海へ。
それを確認する術はもう、ない。
(超-1 2008/「成果」より)
おどおどとした口調で、杉本さんは少し恥ずかしそうに言った。
「時々、夫婦でスポット巡りにも行くんですよ。
この間は、小坪トンネルと、その上にあるって言われている『サリーちゃんの家』……知ってますか?
それと、あと、その近くにある火葬場にも、出るって噂がありますよね。それを見に行ったんですよ。
トンネルと火葬場は見てきたんですけど、『サリーちゃんの家』は見つけられませんでしたよ」
小坪トンネルは、タレントのキャシー中島さんの話で一躍有名となった心霊スポットだ。
その上の山のそばにある火葬場も、いくつかの目撃証言が聞かれる場所。
『サリーちゃんの家』は、探すと見つからず、迷い込むと薄気味悪い子供に囲まれるという場所で、稲川淳二の『メリーさんの館』の本当の場所ではないかと噂されている。
いずれも怪談マニアなら聞いた事があるであろう場所だ。
杉本さんは夫婦で、そういうスポットの情報を見つけては探索に行っているという。
私は本で仕入れた話を杉本さんに語った。反応は予想以上に良好だった。
嬉しくなった私は、ネタ元となった手持ちの怪談本とDVDをひとつずつ、彼に貸し出した。
翌日、彼は満面の笑みを浮かべ、ぺこぺこと頭を下げながら、それらを返してくれた。
その影響か、スポット巡りの熱が再燃したようで、予定はないのか聞いてみると、
「ええ、ぼちぼちと」
と応えてくれた。
「今度の連休には、ちょっと遠征しようと思ってるんですよ」
目的地はどこですか? と聞くと、
「ナイショです」
と意味ありげな笑みを浮かべた。
なんとなく思い当たる節はある。でも、まさか。
「連休明けには成果をお話ししますよ」
その彼の言葉は、実現する事はなかった。
連休が明けたオフィスに、彼の姿はなかった。
彼の家に電話しても、誰も出なかった。
三ヶ月後、彼の上司が、彼の退社を皆に告げた。
奥さんが精神を煩い、その世話の為だという。
「でもな」
昼食の席で、上司が紫煙を燻らせながら漏らした。
「あいつも、何かおかしかったんだよ」
彼は行ってしまったのだろうか。
本とDVDに大きく取り上げられていた場所……樹海へ。
それを確認する術はもう、ない。
(超-1 2008/「成果」より)






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