【リライト】はさみ

2008年04月06日 04:06

 千明さんは、急に友人の瑠璃さんに呼び出された。
 ある家を見て欲しいという。
 彼女の実家が建て替える事となり、仮住まいの下見に行ったのだが、そこの様子がおかしいのだという。
 霊感のない彼女は、慌てて霊感がある千明さんを呼んだのだ。

 駆けつけた千明さんは部屋を見るなり、口元を押さえた。
 濃厚な毒気に全身が身震いする。
 その中心に、その男はいた。
 銀色の細長い散髪鋏を構えた男。
「鋏をもった男が座ってる……」
 それだけ言うのが精一杯だった。
 心配する瑠璃さんに見送られ、彼女は退散した。

 急速に具合の悪くなった千明さんは、そのまま寝込んでしまった。
 その夜、奇妙な音に目を覚ました。
 しゃきっ。
 金属をすりあわせる音。
 その方向を見ると、あの部屋にいた男がいた。
 その手に持った鋏を、しゃきっ、しゃきっ、と規則的に開閉している。
 彼女は目を閉じ、男が消えるまで念仏を唱え続けた。

 それが三日続いた。
 いつしか、男は現れなくなった。

 それまでの事を話してから、千明さんは瑠璃さんと会っていない。
 きっと気まずいんじゃないかな、と彼女は寂しげに微笑んだ。

(超-1 2008/「はさみ」より)


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