【リライト】遅刻の理由

2008年04月06日 04:10

「金縛りにあってて布団から出れませんでした!」
 朝のホームルーム中の教室に飛び込んできた真弓は、あっけらかんとそう言った。
 クラス中が大爆笑。先生も呆れて叱るのも忘れていた。

「まったく真弓は天然なんだから。でもあれ、超ウケたよ」
「ホントだってば。ウケ狙うなら、もっと面白い事言うよ」
 真弓はいつもと同じ、とぼけた笑顔で話し始めた。

 その日はいつもより早く、目が覚めた。
 少し遅れて、目覚まし代わりのCDコンポの電源が入る。
 お気に入りのいつもの曲で、さわやかな目覚め。
 ……のはずが、スピーカーからは奇妙な音が聞こえてきた。
 それは、男の低い呻き声のようだった。
 やだ、なにこれ?
 慌てて起き上がって電源を切ろうとしたが、起き上がれない。
 体が全く動かせない。
 家族を呼ぼうとしたが、声も出せない。
 どうにか動かせる目で、室内を見回すと、朝日の差し込む窓が目に入った。
 その窓のカーテンが、すーっ、と持ち上がり始めた。
 カーテンの向こう側に誰かがいて、その手でカーテンを押しているかのように。
 怖くなった彼女は、目を閉じ、助けて、と何度も心の中で呟いた。

 がっ。

 彼女の両手両足が、誰かに掴まれた。
 掴んでいる何者かの姿は見えない。
 尋常じゃない力で掴まれ、激痛が走る。
 そのまま、手足が引っ張られ、強制的に大の字にされた。
 両手両足は完全に伸びきっていた。
 次の瞬間、その力の方向が変わった。
 押し込まれている。両手両足が、胴体に向かって。
 彼女が目にしたのは、信じられない光景だった。
 本当に、手足が体にめり込んでいく。
 肘と膝が完全に胴体の中に押し込まれたあたりで、彼女は意識を失った。

 そして、彼女が意識を取り戻した時、時計の針は八時を指していた。

「寝ぼけたのかな、とも思ったんだけどね」
 彼女はおもむろに、制服の袖をまくった。
 そこにはくっきりと、手の形をした紫色の痣が残されていた。

(超-1 2008/「遅刻の理由」より)


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