2008年04月06日 04:19
北野さんの祖父がまだ四十代の頃。
風呂場で体を洗い流し、湯船に浸かろうとした彼の足下に、白い蛇が姿を現した。
その白蛇は、驚いて立ち上がった祖父のふくらはぎに飛びかかり、牙を立てた。
彼は慌てて払いのけたが、その時にはもう、白蛇の姿はなかった。
噛まれたところを押さえながら、彼は着替えて居間の家族の元へ向かった。
手をどけると、傷口は包丁で切ったかのように、真一文字に切れていた。
深い傷にもかかわらず、血は一滴も出ていなかった。
病院で彼を診察した医者は、しきりに首をかしげて不思議がりながら、彼の傷口を縫った。
それから、彼は奇妙なものを見るようになった。
東北の小さな田舎町である。彼の噂はたちまちの内に広がった。
彼は教員の業務の傍ら、ボランティアの霊媒師を行う事となった。
それは彼が校長まで出世してからも、また、教壇から退いてからも続いた。
祖父の能力を恐れてか、親族で彼と親しいものはいなかった。
唯一、孫の北野さんだけは、祖父にとても懐いていた。
それは、祖父が北野さんだけに語ってくれた、とっておきの秘密だった。
祖父が亡くなった今でも時折、家族の間でその話題が出る事がある。
そのたびに北野さんは、祖父の優しい笑顔を思い出すのだ。
(超-1 2008/「賜る力」より)
風呂場で体を洗い流し、湯船に浸かろうとした彼の足下に、白い蛇が姿を現した。
その白蛇は、驚いて立ち上がった祖父のふくらはぎに飛びかかり、牙を立てた。
彼は慌てて払いのけたが、その時にはもう、白蛇の姿はなかった。
噛まれたところを押さえながら、彼は着替えて居間の家族の元へ向かった。
手をどけると、傷口は包丁で切ったかのように、真一文字に切れていた。
深い傷にもかかわらず、血は一滴も出ていなかった。
病院で彼を診察した医者は、しきりに首をかしげて不思議がりながら、彼の傷口を縫った。
それから、彼は奇妙なものを見るようになった。
東北の小さな田舎町である。彼の噂はたちまちの内に広がった。
彼は教員の業務の傍ら、ボランティアの霊媒師を行う事となった。
それは彼が校長まで出世してからも、また、教壇から退いてからも続いた。
祖父の能力を恐れてか、親族で彼と親しいものはいなかった。
唯一、孫の北野さんだけは、祖父にとても懐いていた。
それは、祖父が北野さんだけに語ってくれた、とっておきの秘密だった。
祖父が亡くなった今でも時折、家族の間でその話題が出る事がある。
そのたびに北野さんは、祖父の優しい笑顔を思い出すのだ。
(超-1 2008/「賜る力」より)






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