【リライト】カマキリ

2008年04月07日 23:31

 お墓参りの日、墓地に着いた車から降りた修司君の姿を見て、彼の母が叫んだ。
「あんた、それ一体どうしたの!?」
 見ると、修司君の服がずたずたに切り裂かれている。
 それは、鋭利な刃物で切り裂いたような、鮮やかな切り口だった。
 車に乗る前は、綺麗なよそ行きの服だったのに。
 修司君の体には、傷ひとつ付いていない。
 その本人も、この状況にぽかんとしている。

 彼の母は、彼がいたずらでそんな事をしたのだと思い、激しく怒った。
 訳がわからないまま責められて、修司君は泣き出してしまった。
 同席していた従兄弟の勝男君は、修司君がいたずらなどしていない事を懸命に説明した。
 彼が記憶している限り、修司君は車内で奇妙な行動は取っておらず、彼と一緒に喋っていただけだった。

 墓地の近くにあった洋服店で新しい服を買い、どうにかお墓参りは無事に終了した。
 帰りの車中では、みな修司君の様子を伺っていた。
 本人も意識して、すっかり固まっていた。
 そんな一行の努力もむなしく、家に到着した車から降りた修司君の服は、見るも無惨に切り裂かれていた。

 勝男さんが大人になってから、修司さんと会う機会があり、その時の話になった。
「そういえば、岐阜の田舎で暮らしていた頃、霊感があるばあちゃんっていうのが近所にいたんだけど、初めてそのばあちゃんと会った時、
”お前の肩にカマキリの霊が乗っている!”
 って、俺を指さして言われたんだよ」
 修司さんは、自分の肩を忌々しげに見つめた。
「俺、虫は見るのも触るのも大嫌いなんだよ」

(超-1 2008/「カマキリ」より)


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