【リライト】夢の話

2008年04月10日 01:01

 小さい頃から、見続けている夢がある。
 闇に包まれた四角い空間にひとり。
 建築資材が転がる、傾いた足場の悪い中を、探るようにゆっくりと歩き、出口を探す。
 金属の冷たい壁にぶつかっては向きを変える。
 やがて疲れた私は、足を滑らせ転倒する。
 倒れた拍子に肘を痛打し、のたうち回る。
 そして、その痛みに目を覚ます。

 過去に似たような経験などはない。
 実体験と変わらないリアルさと、繰り返し味わう肘の痛み。
 何故そのような夢を見るのか、目を覚ますたびに頭を捻っていた、

 去年、実家に帰省した際に、久々に親父とじっくり話す機会があった。
 親父は機嫌が良いと、自分の少年時代の武勇伝を話してくれた。
 その日もいつも通り、上機嫌の親父が語り始めた思い出話に、ふと耳を疑った。

 親父は友人数名と、学校の裏手にあった資材置き場でかくれんぼを始めた
 何処かに良い隠れ場所はないかと、敷地内を見回す彼の目に止まったのは、三メートル四方の傾いたコンテナだった。
 彼はそのコンテナによじ登り、上向きになっている扉から中に飛び降りた。
 しかしその衝撃で、コンテナの扉が閉じてしまった。
 闇に閉ざされたその中からは、出口がどこにあるかわからなくなってしまった。
 大声で助けを呼んだが、外にいる友人達には届かなかった。
 足下には建築資材が散乱している。
 しかし、暗闇でくすぶっているような彼じゃない。
 必死に脱出口を探したが、それが裏目に出た。
 疲れ切ったところに、転がっていた鉄パイプに足を取られ転倒した。
 その際に痛打した肘を骨折した。

「その話、俺が小さい頃に聞いた事あるか?」
「いや、多分、話した事はないんじゃないか? 格好悪いから、あまり人には話してないんだ」
 恥ずかしそうに応えた親父に、私は自分の夢の事を話した。
「そうだ、そうだった」
 と相槌を入れながら、親父は当時を懐かしんでいるようだった。

「不思議な事もあるもんだなぁ」
 一通り話し終わった後、親父が漏らした言葉に、私も黙って頷いた。

(超-1 2008/「夢の話」より)


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