2008年04月11日 01:00
スナックでの勤めを終えた真美さんは、迎えに来た彼の車の助手席から、夜の国道を眺めていた。
そんな彼女を乗せた車が信号にさしかかると、その右手に、やたらとエンジン音の大きな赤いシャコタンが並んだ。
「うるせえな」
小声で呟く彼の向こうに、シャコタンの運転手の姿が見えた。
薄茶色に染めた髪、薄茶色のサングラスの、いかにも軽薄そうな男。
男は彼女の視線に気づいたのか、こちらを向くと歯並びの良くない歯を見せ、にやにやと薄笑いを浮かべた。
「気持ちわりぃ。行こっか」
彼はシャコタンを振り切るように、赤信号を無視して走り出した。
間髪入れず、あのうるさいエンジン音が後に続く。
しかし、音と性能は反比例なのか、徐々にその差は開いていく。
彼女は窓から顔を出し、遠ざかろうとしているシャコタンを見た。
あの運転手はよほど怒っているのか、運転席の窓から上半身を乗り出し、両手を振りあげていた。
「ねえ見てよ。あいつ凄い怒ってる見たい。ハコノリしてなんか叫んでるよ」
「あぁ? 運転席で行儀良く座ってるじゃん」
彼の気のない返事に、真美さんは再びシャコタンを見た。
やはり運転席から、上半身を乗り出して両手を振り回す姿が見える。
「いやいや。やっぱりやってるじゃん。両手振り回しちゃってさ。気合い入ってるぅ」
「じゃあ、どうやってあいつはアクセル踏んでて、どうやってハンドル握ってるんだよ?」
真美さんは黙り込んだ。
黙ったまま、サイドミラーに映るシャコタンを凝視していた。
徐々にその姿は小さくなり、闇の中に消えた。
その姿が見えなくなってからも、真美さんはしばらく後ろの闇が怖くて仕方がなかった。
(超-1 2008/「怒りのメタファー」より)
そんな彼女を乗せた車が信号にさしかかると、その右手に、やたらとエンジン音の大きな赤いシャコタンが並んだ。
「うるせえな」
小声で呟く彼の向こうに、シャコタンの運転手の姿が見えた。
薄茶色に染めた髪、薄茶色のサングラスの、いかにも軽薄そうな男。
男は彼女の視線に気づいたのか、こちらを向くと歯並びの良くない歯を見せ、にやにやと薄笑いを浮かべた。
「気持ちわりぃ。行こっか」
彼はシャコタンを振り切るように、赤信号を無視して走り出した。
間髪入れず、あのうるさいエンジン音が後に続く。
しかし、音と性能は反比例なのか、徐々にその差は開いていく。
彼女は窓から顔を出し、遠ざかろうとしているシャコタンを見た。
あの運転手はよほど怒っているのか、運転席の窓から上半身を乗り出し、両手を振りあげていた。
「ねえ見てよ。あいつ凄い怒ってる見たい。ハコノリしてなんか叫んでるよ」
「あぁ? 運転席で行儀良く座ってるじゃん」
彼の気のない返事に、真美さんは再びシャコタンを見た。
やはり運転席から、上半身を乗り出して両手を振り回す姿が見える。
「いやいや。やっぱりやってるじゃん。両手振り回しちゃってさ。気合い入ってるぅ」
「じゃあ、どうやってあいつはアクセル踏んでて、どうやってハンドル握ってるんだよ?」
真美さんは黙り込んだ。
黙ったまま、サイドミラーに映るシャコタンを凝視していた。
徐々にその姿は小さくなり、闇の中に消えた。
その姿が見えなくなってからも、真美さんはしばらく後ろの闇が怖くて仕方がなかった。
(超-1 2008/「怒りのメタファー」より)




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